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経営に欠かせない要素として「ウェルネス」や「ウェルビーイング」が注目されています。不確実性が高まっている世の中で企業が生き抜くためには、心身ともに健康で生き生きと働く社員を増やすことが大切です。社員の病気やケガを予防するだけにとどまらず、創造性を引き出し、生産性を高めるウェルビーイング経営とは何か。
産業医と取締役執行役員の2つの顔を持つ丸井グループの小島玲子氏が解説します。
出典:「日経ESG」2022年3月号 連載「『しあわせ』が企業価値を高める ウェルビーイング経営のススメ」より
企業がこの先発展するために、働く人の創造性は重要な要素の1つです。創造性は、個人の才能や性格以上に、その人の仕事に対する認知(認識)の仕方によって大きく左右されます。それを示す研究が多くありますので、いくつか紹介します。
72人もの作家を集めて行われた研究があります。まず全員に「雪」をテーマに短い詩を書いてもらい、比較検討用の作品とします。次に作家たちを3つの群に分けます。
1つ目は、仕事に対する外発的なモチベーションを刺激する群です。作家になる理由を7つ記したアンケートを渡し、順位を付けてもらいます。そこには、「本が一冊ベストセラーになれば、経済的に保証されるから」といった、金銭や社会的地位などの外発的なモチベーション要素のみが並んでいます。実は順位付け自体に意味はなく、作家に数分間、外発的モチベーションについて考えさせるのが狙いでした。
2つ目は、内発的なモチベーションを刺激する群です。1つ目の群と同様に作家になる理由に順位を付けてもらいます。この群には、「自己表現の機会を得られるから」など、自分の内面から湧き出る喜び、つまり内発的なモチベーション要素のみを記載したアンケートに回答してもらいます。3つ目はアンケートを実施しない比較対象群です。
その後、作家全員に「笑い」をテーマにした詩を書いてもらいます。そして、彼らとは別の12人の作家が、誰がどの詩を書いたかわからない状態ですべての詩を評価します。
結果は明快でした。最初の比較検討用の詩では創造性にさしたる違いは見られなかったものの、金銭や社会的地位などを考えた後に書かれた詩は、そうでない詩と比べてはるかに創造性が低かったのです。
たった数分、外発的な要素を考えるという些細な出来事によって、普段は詩を書くことを愛する人間の創造性が一時的に下がってしまう......。「毎日アメとムチで突き動かして社員を苦しめる職場では、どれほど創造性やモチベーションが低下していることだろうか」。ハーバード・ビジネススクール教授のテレサ・アマビール氏はこう述べています。
創造性に関しては古くから有名な実験があります。ドイツの心理学者カール・ドゥンカー氏が1945年に考案した「ロウソク問題」と呼ばれるものです。行動科学の研究で広く活用され、知見が蓄積されてきました。実験について説明しましょう。
ロウソク、マッチ、箱に入った画びょうが用意され、被験者は次の課題を与えられます。「机にロウがたれないように、ロウソクを壁に取り付けてください」。多くの人は、画びょうでロウソクを壁に留めようとしますが、うまくいきません。
答えは、画びょうを箱から取り出し、その箱をロウソク台にして壁に留めるというものです。10分も考えれば解けるものの、なかなかすぐには答えを導き出せません。鍵は、固定化した認知を乗り越えられるかどうか。つまり「単なる画びょうの入れ物」と思っていた箱を、「ロウソク台」という別の用途に活用することを思いつくかどうかです。
米国の作家ダニエル・ピンク氏は著書『モチベーション3.0』で、このロウソク問題を紹介したうえで、次の2つの事例を示しています。
1つは外発的報酬と創造性の実験です。ロウソク問題を解いてもらうに当たり、「解く時間が早かった上位25%の人には5ドル、1番に解けた人には20ドルを渡す」という外発的な報酬がある群と、ない群に分けました。すると外発的報酬がある群はない群に比べ、なんと平均で3分半も余計にかかったのです。創造性が高まるようにインセンティブを設けたのに、逆に思考力は鈍り、創造性は阻害されました。
もう1つは、子どもの夏休みに「3冊の本を読む」という宿題が出た時の、親の行動による影響です。「3冊読んだら、お小遣いをあげる」と、親が外発的報酬を提示することがあります。しかし、良かれと思ってしたこの行為によって、子どもの多くはもはや4冊目の本を手に取ることはなくなります。3冊読んだら得られる金銭に意識が注がれるようになり、読書本来の楽しさや、ページをめくる喜びそのものへの認識度合いが減るのです。
仕事において、外発的報酬は重要です。しかし創造性が求められる仕事における提示の仕方によっては、時に害にすらなると多くの研究者が述べています。外発的報酬を超える内発的報酬、仕事そのものに興味があるという主体的な状況をいかに創れるかが鍵になると思います。
働く人ができるだけ自分自身で選択して仕事に取り組むデザインの1つとして、丸井グループでは10年以上前から「手挙げの文化(※)」を醸成してきました。
最近では、社外に開かれた働き方を推進しようとしています。価値観に共感する人が社内外から主体的に集まり、プロジェクトを遂行するように働くことをめざしています。
2020年に、価値観を共にするスタートアップ企業と当社の社員による「共創チーム」を立ち上げました。現在の共創先企業は20社を超え、合計で24チーム、212人体制となっています。
■ 丸井グループが立ち上げた「共創チーム」の体制
投資先企業の社員と一緒に、責任を持って協業を実行するチームを新設した。各チームのリーダーには執行役員を配置し、意思決定のスピードも速い。写真はメルカリとのチーム
写真:丸井グループ
冒頭で、仕事への認知の仕方は創造性に影響すると述べました。スタートアップ企業では、しばしば仕事への向き合い方(認知の仕方)が大企業とは異なります。認知や感情は人から人に伝播するため、一緒に働くことで、仕事の認知の仕方も互いに刺激されると予想されます。共創の価値は、各企業の事業の強みを生かすことにとどまらず、人々の認知の変化によって創造性が高まることにこそあるように思います。
※あらゆること(プロジェクト参画、人事異動、昇進昇格に至るまで)において自身の意志を表明して自己選択する、丸井グループの仕組み
#丸井グループ 取締役 CWO 兼 産業医でもある小島玲子の日経ESG連載企画第16弾!
— この指とーまれ! │ 丸井グループ (@maruigroup) October 13, 2022
認知の仕方が、創造性を左右
「報酬を得られる」ことが、仕事の創造性を低下させる!?丸井グループの、「自分で選択する」働き方とは。#ウェルビーイング #Wellbeinghttps://t.co/uRc6fqz8Dq
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