Well-being
2023.5.8

「Well-beingに働きたい!」#2 ~人間関係編~

人と組織の活性化を進めるうえで、健康でイキイキと働くことが重要であるとして、働く人の「しあわせ」と「ウェルネス」をかけ合わせた「Well-being」が世の中からも広く注目されるようになりました。

目次

    私たちが心身共に健康でイキイキとWell-beingに働いていくためのヒントを、丸井グループの産業医であり、Well-being経営を推進する執行役員の小島 玲子先生と、同じく産業医の日比野先生、小口先生にお聞きする連載企画「Well-beingに働きたい!」

    第2回となる今回は、「職場の人間関係」をテーマに、「相手の顔色をうかがってしまう」といった悩みを解消する方法や、身体と心の連動性、モチベーションの保ち方などを丸井グループで産業医を務める小口先生にうかがいました!

    小口 まほこ 先生
    丸井グループ 産業医
    鉄道会社の産業医を1年経験し、その後自動車部品工場、食品製造業、テレビ局などで月1回の嘱託勤務で産業医を経験後、現在は丸井グループウェルビーイング推進部に所属し産業医としてご活躍中!

    不安な気持ちは自分の考え方次第で解消できる

    職場において人との付き合い方・距離の取り方に悩んでいる社会人はたくさんいると思いますが、「相手にどう思われているか気にしすぎてしまう」と感じている方が人間関係を構築するためのコツがあれば教えてください!

    同じ事実を見ても、それをどのようにとらえるか(認知の仕方)によって、受け手側の気持ちは大きく変わってきます。また、何気ないコミュニケーションの中で、相手がどう思っているかを自分の中で勝手につくり上げていることが多く、実際には事実とは異なることも少なくありません。

    例えば、友人からメールの返信が来ない時、あなたはどのように考えますか?

    このように同じ事象でも、どのように考えるか(認知の仕方)によって受け手の気持ちは全然違いますよね。つまり、気持ちは考え方次第なのです。また、相手が何を考えているか不安に思った際は、「なぜ不安に思ったのか?」その根拠を考えてみましょう!

    例えば、上司とすれ違った時に挨拶がなかったとします。相手が何を考えているのか不安になる人は、どのような考えが浮かんでいるのでしょうか。「何か怒らせるようなことをしたかな」「私は気にかけてもらえてないのかな」そんな考えが浮かんでいるのかもしれません。しかし、昨日は挨拶を返してくれていたとしたら、気づかなかった可能性もあると考えられますよね。

    悪い方向に考えてしまう時は、たいてい悪い側面ばかりを見ています。浮かんだ考えは一つの可能性であり、ただの憶測だと考えるようにしましょう。

    社会に出て働いている以上、正直なところどうしても反りが合わない上司と働くこともあると思いますが、その場合の対処法はありますか?

    ストレスが溜まっている時、私たちは一つの考え方にとらわれるようになります。そのような時ほど仕事や人間関係の問題をもう一度新しい視点で見直して解決法を考えてみる。そのためには、現実的で柔軟な考え方ができるようになることがポイントです。

    例えば何か指摘があった時に、「怒られた!」ととらえることもできますが、「心配してくれた」「指導をしてくれた」「期待されている」という見方もあるかもしれません。考え方を変えて思い込みから解放されると気が楽になることがあります。それでも難しい場合は、上司から意識的に距離を置くことも大切です。苦手な人と距離を置くことは決して逃げることではなく、距離を置くことで見えてくることもあるからです!

    人の顔色や人の意見に敏感になってしまう方々にアドバイスがあればお願いします!

    実はストレスには運動が有効だと言われています。オランダにおける大規模調査では、運動すると不安が減り、より社交的になることが示されています(*¹)。

    また、フィンランドで行われた調査では、週に最低2、3回運動している人は、運動をほとんどしない、もしくは全くしない人に比べて、鬱・怒り・ストレスといった「ひねくれたものの見方」が極めて少ないことも明らかになっています。

    運動すると気分が良くなるだけでなく、自分自身を信頼できるようになり、少しずつ自信もつきます。そのため不安を感じやすい方は、運動を習慣化することをおすすめしています。

    逆に、ちょっとしたことでイライラしやすい方に効果的な方法はありますか?

    マインドフルネスや運動は、感情の起伏を穏やかにする効果があると言われています。マインドフルネスとは「ただ目の前のことに集中する状態」です。例えば...

    このように人が「ただ目の前のことに集中する状態」でいられるようになると、脳の疲労が減って、集中力や創造力、幸福感が高まることが、近年の科学的な研究で明らかになってきています。生活の中で、まずは1分でもいいのでマインドフルに過ごす時間をつくってみてはいかがでしょうか?

    一人で抱え込まずに相談することが大切!自分が相談を受けたら?

    悩みを話すことが苦手な人や、一人で抱え込んでしまう人はどのように対処するのが良いのでしょうか?

    人は誰かに話すことで心が落ち着いたり、考えを整理できたり、異なる見方ができたりすることもあります。

    「悩みを人に相談したことで解消されましたか? または気が楽になりましたか?」という質問に対して、「はい」と答えた人はどれくらいいると思いますか? 厚生労働省の調査では、約9割の人が相談することによって不安が解消した、もしくは気が楽になったと回答しています。

    丸井グループの社外相談窓口「HANASOU」もぜひ活用してください!もし人に話すことが苦手だと感じる場合は、自分の感情や考えを書き出してみることも有効です。紙に書き出すことで、不安やストレスが緩和され頭の整理にもつながるのでぜひやってみてほしいです。

    友人や職場の人から悩み相談をされた時に、気をつけた方が良いことはありますか?

    まずは自分の意見を言ったり説教をせず「聞き役」になり、相手の気持ちを理解するように努めましょう。

    話を聞いてもらうことで心がスッキリしたり、共感や理解をしてもらうことで孤独感や不安感が和らぐことがあります。また、「○○なことがあってつらかったんだね」と相手が言った言葉をくり返すことや、「つまり○○ってことなのかな」と少し要約して伝えるなど一緒に問題を整理してあげるだけで、問題解決の糸口が見つかることもありますよ。

    変化によるストレスに負けないモチベージョンコントロールの方法

    仕事をする中で、異動などによって新しいことにチャレンジする時や、環境が変化する時があると思うのですが、そういった時に感じるストレスや不安にうまく対応するコツはありますか?

    環境が変化するとわからないことができて不安になったり、「皆忙しそうで聞きづらい」など、情けなくなったり、みじめな気持ちになることもあると思います。

    ここで大切なのは、自分の考え方・感じ方の癖を知ることです。考え方の癖には、こんな例があります。

    ・白か黒かなんでも完璧にできないと気になってしまう 「白黒思考」
    ・「~するべき」といった思い込みを持ってしまう 「べき思考」
    ・失敗をすべて自分の責任だと思い込んでしまう 「自己関連づけ」

    このようにいくつか種類があり、この癖に気づくことで対策することができます。

    「白黒思考」や「べき思考」で苦しくなった時には、「また白黒思考が出て、完璧を求めようとしすぎたからまずは7割でいこう」とか、「皆忙しそうだから自分で考えるべきだと思い込んでいたけど、相談して進めた方が良い仕事ができる」など、考え方の癖に気づけば対処ができます。

    親しい人が同じような状況で不安を感じていた場合に、あなただったらどのようにアドバイスをするかを考えてみると視野が広がるかもしれません。一人で考えていても自分の考えにハマってしまうので、こういう時こそ誰かに相談することも大切です。

    確かに。まじめな人ほど「タスクをやり切らねばならない」という責任感を感じてそのプレッシャーを負担に感じてしまいそうですよね。


    まずは先ほどの「タスクをやり切らねばならない」という「べき思考」や「完璧にやりきらねばならない」という「白黒思考」が自身の中にあることに気づくことです。

    そして「そもそも全部やる必要はあるのか?」「優先順位は?」「誰かの助けを借りる、役割分担はできないか?」など立ち止まって考えてみると良いでしょう。

    また、これは個人的な意見ですが、常に「意味・目的」は何であったか立ち返ることも有効だと思います。私たちは日々の仕事の中で、自分のやっていることの当初の目的がどこかに消えてしまい、目的が手段にすり替わってしまうことで振り回されてしまうことがよくあります。何のためにやっているのか、立ち戻る時間をつくることも大切ではないかと思います。

    ありがとうございました!これで新しいチャレンジなどにも怖がらずに仕事に向き合えそうです!

    今回は、「Well-beingな人間関係」をテーマに、丸井グループの産業医の小口先生にお話をうかがいました。次回は、丸井グループ産業医の日比野先生に「テレワークの有効な活用方法」についてお聞きします。お楽しみに!

    *¹:Regular exercise, anxiety, depression and personality: A population-based study
    Author links open overlay panelM.H.M. De Moor, A.L. Beem, J.H. Stubbe, D.I. Boomsma, E.J.C. De Geus