人的資本経営に取り組む丸井グループでは、社員の経営への参画意識を高めるため、2023年の2月から譲渡制限付株式付与制度を導入しています。 社員に自社株を付与することで、株主意識の醸成と行動変容を促しながら、経済的な利益も得られるこの制度は、導入から間もなく2年を迎えます。 この制度を通して、本当に社員の意識や行動は本当に変わるの?臨時ボーナスと何が違うの?といった「株式付与制度」のホンネやギモンに迫るこの企画。 制度の目的や効果、そして制度をきっかけに風土醸成をめざす取り組みまで徹底調査しました。
会社へのエンゲージメントやモチベーションを高めることを目的に、社員に対し自社株式付与制度を導入する企業は近年増加しています。また、報酬の一部として株式を付与することも多く、これにより社員が配当金として会社の成長に直接的な利益を得ることができ、会社と社員の利益を一致させることができます。
丸井グループの場合はどうでしょうか??
では、実際に社員向けに発信された資料の内容を見てみましょう。
ここで注目すべきポイントとしては、この制度が「人的資本投資」の一環であることです。
丸井グループは社員へのインセンティブ、つまり経済的な利益を得られるだけでなく、株式を保有することで得られる株主意識の醸成とそれに伴う行動変容を大きな目的としています。
株式付与制度が全社員へ告知された約半年後、マネジメント職を除く正社員に一人当たり150株の株式が5年間の譲渡制限付きで付与され、対象となった約4500名の社員が社員株主となりました。
しかし多くの社員にとって、この時点では社員株主制度への理解はまだまだ低かったのがホントのところ。さまざまな課題が見えてきました。
制度がスタートした当初、社員からはこんな声が上がってきました。
うーーーーーん、思ったよりずっと課題は大きくて根深そう...。課題となっていることを整理してみると...
このように、「制度」だけでは意識・行動の変容につなげるのは難しいため、段階的に社員株主意識の醸成に取り組むことになりました。
この制度の理解浸透や行動変容の伝道師となるべく、社員への株式付与に先立ちグループ横断プロジェクトが発足し、丸井グループ各社・各事業所から多くの社員が手挙げで参加しています。
2022年から始まったこのプロジェクトは現在3期メンバーでの活動がスタート。これまでにのべ91名の社員がプロジェクトに参加しました。
プロジェクトは継続的に、各社横断でより多くの社員が参加することで、グループ社員への接点を多くもつことができ、その結果として制度の理解浸透が拡大していきます。
会社が導入した「制度」を「企業風土」まで成長させる役割を、このプロジェクトが担っています。
プロジェクトメンバーが、株主意識醸成へ向け社員目線で企画した取り組みをご紹介します。
まずは、社員株主として身に付けたい知識の向上をめざし、社員向けに決算説明会を開催しました。普段聞きなれない決算用語の解説や、具体的な取り組み事例などを紹介し、クイズなどを活用しながら全員が楽しめるように工夫し、数字への苦手意識払拭にも取り組みました。また、このイベントの中で決算説明会の解説を行ったのは、経営層やIR担当者ではなく、社員株主プロジェクトのメンバーです。
ある意味、数字のプロであるIR担当者や経営層ではなく参加者と同じ目線を持った一般社員がわかりやすく説明を行った、というのもこのイベントのポイント!
さらに、決算説明会やIR DAYの様子は全社に向けて生配信し、より多くの社員が就業時間内に視聴ができるようになりました。
株主総会への参加を促進するため、総会のライブ配信を就業時間内で視聴可能とし、積極的な告知を行いました。また、株主総会で行う決議事項の解説や議決権行使の方法など「株主総会へ向けた株主としてできること」の事前共有を図ったことで、総会への参加者も約2.5倍に増え、社員株主の議決権行使率も56%まで増加しました。
ライブ配信で気軽に視聴できることもあり、興味を持ち視聴しました。質疑応答では経営陣が丁寧に説明されているところが印象的で、株主さまが丸井グループの株主総会は雰囲気が良い、とおっしゃっていたことも印象的でした。株主総会の場は丸井グループの取り組みへの理解を深めていただく大事な機会だと実感しました!
株主さまからの質問や意見などの内容が知りたくてWebで参加しました。
丸井グループがどう見られ、取り組みに対して賛同を得られているかが気になっていましたが、株主さま視点でも賛同が得られており、営業店での取り組み内容とのズレもないと再確認できたので、働きがいが増しました!
また、総会当日は会場のロビーにて丸井グループが取り組むインパクト事例を紹介した展示ブースを設置し、株主さまをお迎えしました。
「自分たちの活動をもっと多くの方に知ってほしい」という積極的な想いで集まった担当社員が、株主さまに直接取り組み内容をお伝えすることで株主さまにも社員の熱意が伝わり、会話や質問などを通してさらに対話が盛んに行われました。
この展示ブースの取り組みは株主総会当日の質疑の場でも話題に上り、株主さまからお褒めのお言葉をいただきました。当日の様子はこちらにてエピソードを交えご紹介しています。
https://note.com/marui_0101/n/nd8aed9a730db?sub_rt=share_pw
丸井グループでは、社員が株主としての理解を深めるとともに、企業活動がどのように株価や企業価値へ影響するのかを実感できるイベントを開催。
社員株主プロジェクトの一環として開発されたオリジナルカードゲームでは、実際の事業や将来予測される社会変化を反映したシナリオを体験でき、ゲームを通じて、企業活動とインパクトのつながりや、それが株価に及ぼす影響を楽しみながら学べる仕組みが好評でした。
また、「共創」や「『好き』が駆動する経済」をテーマにした講演やパネルディスカッションも実施し、お取引先さまや取り組みに携わる社員が直接エピソードを語ることで、より具体的で実感を持てる内容になりました。
講演やパネルディスカッションの様子はライブ配信され、また初の試みとして展示ブースの紹介や参加社員へのインタビューなどを中継で行い、オンラインでも参加しやすい工夫をしました。
自身の仕事や、グループが採択している事柄が、株価にもつながっていることを可視化できるとてもおもしろく、考えさせられるゲームでした。こんな風に自身の仕事も、株価に影響しているのか!と実感できました。
必ずしも利益を増やすことだけが株価上昇につながるわけではないということ、そして一つひとつのビジネスや社会としての取り組みが後々の企業価値につながってくるということを意識させられました。
日頃インパクトや非財務要素に触れる機会がほとんどないので、丸井グループの一員としての意識が改めて芽生えました。
あわせて、知識習得における心理的ハードルを下げるために公式Youtubeを通して動画を配信。3~5分程度の短い動画にすることで、数字や株に対して苦手意識のある社員にもわかりやすく制度や仕組みの解説を行いました。
https://www.youtube.com/@maruigroup
社員への意識調査の結果、認知・興味、意識・知識の向上においては90%を超える社員が理解し、意識の変化があったと回答する一方、株主総会への議決権行使率は55.5%にとどまるなど、取り組みの効果と課題がそれぞれ見えてきました。
現在3期メンバーでこの課題に対する取り組みを進めています。
丸井グループ 総務部 松本 進之介さん、山田 奈々子さん
このプロジェクトは、「株式の仕組みや社員株主の意義についての理解浸透・共感を広げることで、丸井グループ全社員の株主意識を醸成する」というミッションのもと発足しました。
プロジェクトに手挙げをしてくれたメンバーは必ずしも株式に詳しい社員ばかりではありませんでしたが、自分自身がしっかりと株式や本制度を理解し、同じ社員である自分たちの言葉で、社員の株主意識を高めていくという共通の目的を持つことで関係性を高めていきました。
加えて、プロジェクトメンバーそれぞれがアンバサダーとして、自ら楽しみながら所属する部署や事業所に啓蒙活動を行った結果、接点を持った社員の意識や行動に変化が現れ、メンバー自身も小さな成功体験を通じて大きなモチベーションを得ることができました。まさに全員がフロー状態に入り、プロジェクト全体でBreakthroughを体現できたと感じています!
特に印象的だったのは、昨年4月に実施した「中期経営推進会議*特別編~決算資料の読み方~」です。このセッションには、それまで一度もこのような会議に参加したことのない社員が多数参加し、中期経営推進会議の第一歩を踏み出すきっかけを提供することができました。参加者からは「決算資料や会社の方向性への理解が深まり、本決算を見るのが楽しみになった!」といった前向きな声が寄せられ、意識の変化を肌で感じました。
さらに株主総会では、ロビー展示を見た株主の方々から「この社員の熱量やモチベーションはどのように維持されているのか」といった前向きな質問を受け、当社の取り組みへの共感を得ることができました。
こうした取り組みを通じて、社員株主としての役割や丸井グループの企業活動への理解が深まりました。社員であり株主でもある「社員株主」という2つの背番号を持つ私たちは、ステークホルダー経営の推進に貢献していけると確信しています!
*中期経営推進会議...丸井グループの今後の経営にとって重要となるさまざまなテーマを考える場として、年齢・性別・組織の壁を超えた全社的な会議。グループ社員が自ら手を挙げ参加できる会議として、年10回程度開催しています