昨年11月に行われた第2回 丸井グループ アプリ甲子園で審査員から圧倒的な高評価を受け、見事優勝 に輝いた「ThanQ」は産休・育休中の不安な気持ちや必要な手続きをサポートするアプリです。丸井グループの経営陣だけでなく、起業家やデジタル分野のプロである審査員からの評価、オーディエンスとして参加したグループ社員からも多くの共感を得て、現在はイニシアティブとしてアプリのローンチをめざし活動をしています。アプリ甲子園から約1年を経たThanQアプリ現在の進捗と、ローンチまでの挑戦の連続をイニシアティブメンバーを取材しました!
イニシアティブメンバーは全員が子育て中のパパ・ママ
――今年4月からは本格的にイニシアティブが発足し、サービス開始へ向けたアプリ開発に取り組んでいるということですが、現在のアプリ開発の進捗はいかがでしょうか?
これまでに、産休・育休中のママ・パパの心をサポートする「ママパパ相談」「応援メッセージ」の機能、出産にともなう煩雑な申請手続きをサポートする「産休育休マニュアル」「やることリスト」のパイロット版を実装することができ、本格的なサービス開始に向けて8月には第1回の実証実験を行いました。
「心のサポート」「手続きのサポート」の機能を搭載
――トライアル期間には、手挙げした社員がサポーターとして実証実験に参加したそうですね!
社内公募によりアプリの実証実験 に参加してくれる社員を募り、当事者である産休・育休中のママ・パパ、その相談役となる先輩ママ・パパ合わせて100名を超える社員にアプリ開発のサポーターとして参加いただきました。
サポーターには実際にパイロット版のアプリを使ってもらい、UI・UXについてフィードバックをいただきました。フィードバックでは、ThanQの価値を強く感じたという声と共に、機能性や操作性についての改善点の声ももらい、さらなるブラッシュアップの方向性も見えてきています!
――まずは社内で実証実験を行ったということですが、100人を超えるサポーターが集まったということは、アプリに対する関心や期待感も非常に高そうですね。反応はいかがでしたか?
当初の想定を大きく上回る数の手挙げ社員が参加してくれ、関心と期待の高さを感じたトライアルとなりました。
サポーターのママ・パパ社員からは、「同じように悩み、それを乗り越えている人がいる ことを実感できた」「しくじりを元にしているアドバイスは、すべてマニュアル化しても良いのでは」などの声をいただくことができました。
また、先輩ママ・パパからは、「自分の経験が誰かの役に立っていると感じて、うれしい気持ちになった」「社内制度や部署のことなどはほかで相談できないため、このアプリの独自性を感じる」といった声がありました。一方で、今後の期待や改善点の声としてプロフィール機能の充実や、人事情報と連携などの期待など があり、今後どのように改善していくか検討しています。
――実際のアプリを触らせてもらったのですが、自由に相談ができるママ・パパ相談機能では、「早生まれの保活」や「復職時の勤務時間」などユーザー同士のコミュニケーションが盛り上がった様子がわかりますね!
想定以上に盛り上がりました!復職に向けて不安を抱えてい方に対し、たくさんの共感の声や経験談などさまざまなコメントが寄せられていて、同じように不安を感じているかたがたくさんいるということを改めて実感できたとともに、 人とのコミュニケーションが好きで、誰かの役に立つことに喜びを感じる社員が多い丸井グループらしさが出ているなと感じました。
――では、これまでのアプリ開発の過程で苦労している点はどんなことですか?
このアプリでは社内の人事情報を活用して煩雑な手続きなどをサポートするアプリのため、高いセキュリティ性を担保したシステム開発が必要になり、アプリ甲子園にエントリーした際に制作したアプリの仕組みではなく、ゼロベースで使用するノーコードツールから決めることになりました。そのため、セキュリティ上の課題をクリアできるツールとパートナー企業選定を行うまでに時間と労力がかかりました。
そうした中、第1回の実証実験に向け、2カ月という短い期間で相談機能を中心としたコミュニティ設計などの構想をアプリUIに反映していく制作、さらなるUX・UI向上のための実際にアプリを利用しフィードバックをもらうトライアル設計は非常にハードな作業が続きましたが、メンバー全員で尽力し何とかトライアルを実施することができました。
ママ・パパ相談機能では子育て中のリアルな悩みがたくさん寄せられていました
私たちイニシアティブメンバーは、所属も本業もバラバラですし住まいも勤務地も違うので、日ごろから自然に顔を合わせることはありません。その分、進捗の共有がきちんとできていないと制作時の悩みや立ちはだかる壁をメンバー間で気づくことができず、手遅れになってしまう。それを避けるためにも、メンバーそれぞれの役割を明確にするとともに、定例ミーティングでの進捗確認を徹底しました。壁にぶつかった時、進捗の遅れがわかった時には、メンバー同士のサポートに加え、イニシアティブの伴走をしてくださっているMutureやDX推進室・経営企画部・人事部・丸井グループのシステム分野を担う事業会社であるエムアンドシーシステムのグループシステム開発部の皆さんにもサポートいただきながら進めています。
――イニシアティブの伴走としてMutureと協業されていますが、Mutureの伴走で学んだとや気づきにつながったことを教えてください。
8月にトライアルを実施した際に、当初の想定にはなかった「先輩ママ・パパ同士の育児相談」が一部見られました。「子どもの受験」や「ランドセル選び」など子育て中のさまざまな悩み相談がでてきて、同じく子育て中の私たちとしてはとても共感できましたし、こんな価値もあるかもと、機能に盛り込むことを検討しました。
しかしMutureの皆さんから、「このアプリで本当に解決したい課題は何か?」という示唆をいただき、改めて当事者のインサイトに立ち返ることができ、この機能の方向性をあらためて再検討しました。そういった、アンケートやインタビューからのアプリコンセプトの再設計は、Mutureから学んだことの中でも非常に重要なことでした!
――イニシアティブの活動自体かなり時間も労力もかかっていると思いますが、所属している部署での業務との両立って正直大変ではないですか?
...正直、大変なことはたくさんあります(笑)。
しかし、このアプリを通じて、丸井グループだけでなく、社会全体の産休・育休に関する不安を解消できると信じているので、チームで協力しながら前向きに取り組んでいきたいです。アプリ甲子園から生まれたイニシアティブとして本格的にスタートしたばかりで、まだまだ少人数で制作しているためリソースが足りない部分もありますが、そこは協力してくださる協力会社や関連部署の方々に助けていただきながら乗り超えていきたいと思います。
それに、イニシアティブで学んだことは所属部署の業務に活かせることもありますし、その逆もしかりなので得られることは大きいと感じています。ユーザーのインサイトをより深く理解することなどは、現業にも活かせる気づきでしたね。
――アプリの本格リリースへ向けて、イニシアティブの今後の予定を教えてください。
第1回トライアルを通じていただいたフィードバックとサポーターへのインタビューを通じ、当事者インサイトをより深く理解しアプリUX・UIへ反映していきます。また、煩雑になりがちな手続きをサポートする「申請」「シミュレーション機能」については、人事情報とアプリサーバーとのシステム連携を進め、年内に第2回トライアルを実施予定です。
今年度内には社内実装できるように進行していますので、頑張っていきたいです。
丸井グループアプリ甲子園では優勝・オーディエンスをW受賞
ThanQの取り組みは、丸井グループがめざす「失敗を許容して挑戦を奨励する企業風土」醸成のために「打席に立つ」ことを象徴する事例として、本サイトでもこれまで複数回にわたり取り上げてきました。
イニシアティブメンバーは全員がアプリ開発も初心者、そして人事を担当する部署に所属しているわけでもありません。それでも、4人全員が子育ての経験があり、産休・育休時のママ・パパたちの不安や苦労を知っているからこそ、このアプリの社会的な価値を信じて活動を進めています。
今まさに本格稼働へ向け一段ギアを上げたThanQチーム。今後もその活動を追っていきます!