Well-being
2024.8.6

「Well-beingに働きたい」#7 〜MBTI編〜

私たちが心身共に健康でイキイキとWell-beingに働いていくためのヒントを、丸井グループの産業医であり、Well-being経営を推進する執行役員の小島 玲子先生と、同じく産業医の日比野先生、小口先生にお聞きする連載企画「Well-beingに働きたい!」。
第7回のテーマは「MBTI」。現在SNSなどで注目を浴びる「MBTI」。実は正式なMBTIとはまったくの別物って知っていましたか?丸井グループが社員に提供しているのは、正式なMBTIです。その概要や、組織におけるMBTIの活用、丸井グループでの取り組みについて、丸井グループで産業医を務める小口まほこ先生にうかがいました。

目次
    小口 まほこ 先生
    丸井グループ 産業医
    鉄道会社の産業医を1年経験し、その後自動車部品工場、食品製造業、テレビ局などで月1回の嘱託勤務で産業医を経験後、現在は丸井グループウェルビーイング推進部に所属し産業医としてご活躍中!
    2021年に一般社団法人日本MBTI協会の認定ユーザー資格を取得。

    MBTIとは?

    MBTIは現在、国内の複数の企業でも導入されているとうかがっています。 まずは、MBTIの概要から教えてください。

    MBTI(エムビーティーアイ:Myers-Briggs Type Indicator)は、国際規格に基づいた、世界でもっとも広く、かつ多く使われている性格検査(フォーマルアセスメント)です。スイスの心理学者であるユングの「タイプ論」をもとに開発され、現在世界中の50カ国以上で活用されています。
    MBTIは、個人をタイプ別に分類したり、性格を診断したりすることが目的ではありません。回答した個人一人ひとりが、MBTI有資格者(認定ユーザー)の支援のもと、自然と使っている自分の認知スタイル(こころの利き手)についての理解を深め、自分の心の成熟のため、また自分と異なる他者を理解していく、人生の羅針盤となることを最大の目的としています。

    MBTIは初版が1962年に完成して以来、60年以上にわたり、研究と再開発が進められています。現在、アメリカ国内の受検者は年間200万人と言われています。 
    例えば、ずいぶん前の話ですが、元メジャーリーガーのイチロー選手がマリナーズに移籍した際、「君は(MBTIで)何型なの?」とメンバーに聞かれた逸話があります。MBTI発祥の地であるアメリカでは、それほどMBTIが浸透しているんですね。

    日本でMBTIは、どのくらいの認知度があるのでしょうか。

    日本でMBTIが正式に導入されたのは、2000年からです。現在は日本国内で、20万人以上の方が受検し、フィードバックを受けていると言われています。

    MBTIは、近年ネットなどでも公開されていて、SNSなどを中心にブームになっている印象です。将来世代など若者も注目しているようなので、少しずつ認知度は高まっているのかもしれませんね。 

    そうですね。ただ、インターネットやSNSに、「16パーソナリティ診断」などの名称で掲載されているテストは、公式のMBTIとは別物になります。MBTIがユングのタイプ論をベースにしているのに対して、「16パーソナリティ診断」は特性論をベースにしていて、MBTIとは全くの別物です。
    MBTIでは回答した結果よりも、その結果に対して、認定ユーザーの支援を受けながら、じっくりと自分の認知スタイル(こころの利き手)を体感しながら体験的に理解していく過程の方を重視しています。その過程における自分への気づきはもちろん、他者との違いについても理解が深まります。なので、認定ユーザーの介在なしに、無料でWebで受けられるスタイルのものは、MBTIではありません。

    組織におけるMBTIの活用について

    企業ではさまざまなフレームワークや検査ツールが利用されていますが、MBTIとどのような違いがありますか。 

    多くの心理検査は、受検者の外から観察できる行動特性や適性を測定し、それらを基準値と比較して(=他人と比較して)結果が出されるものです。こうした行動特性等を測定するような性格の見方を「特性論」による見方と言います。特性論で馴染みのあるのは偏差値です。標準より「高い」「低い」という相対的な尺度で数値化するものです。
    それに対して、MBTIは「類型論(タイプ論)」という考え方で人の性格を見ています。タイプ論の場合は、そもそも異なるカテゴリーや型が存在するというところからスタートしています。いわゆる理論ベースで性格をみます。
    MBTIはタイプ論をもとに、心をカテゴリーにわけて考えた検査です。人と人とを比較しないので、善い性格や悪い性格、長所と短所といった評価はしません。基本は、一人ひとりが持って生まれた個性を「GIFT」という概念で考えているメソッドなので、能力や適性などの優劣は一切見ない。その人のみに焦点を当て、その人の強みと課題に受けた本人が気づいていくというのがMBTIの特徴です。

    MBTIは、自己理解にとても役立ちそうですね。やはり、MBTIはマネジメントやチームビルディングなどにも活用されているのでしょうか。

    例えば、既存のチームで、「メンバー同士の了解を得たうえで、お互いのMBTIを共有して、プロジェクトメンバーを選ぶ」などの活用方法はあるかと思います。
    ただし、チームメンバーを決めるためにMBTIを使用することは許可されません。プロジェクトメンバーをつくるには、いろいろなタイプの人を混ぜてつくったほうが多様性があって、さまざまな意見が出やすいなど、パフォーマンスの向上や創造性が発揮される部分もあります。そうすることで、MBTIの目的である人の心の成長にも有効に使っていただけるのではないでしょうか。
    また、お互いのタイプがわかると、仕事のうえでも、それにもとづいてコミュニケーション方法に気をつけたり、業務を分担し合ったりできます。新しいチームにありがちな、必要以上の対立や労力の無駄づかいを回避できる可能性もあります。

    MBTIの検査結果(タイプ)は、受検のタイミングなどに応じて変わってくるのですか。

    結論から言うと、認知スタイル(こころの利き手)は変わりません。これは、生まれた時の利き手が基本的に変わらないのと同じ考え方です。 
    ただし、タイプは「成熟していく」と考えられています。まずは自分のタイプを理解して、それを適切に使っていけるようにし、徐々に、自分のタイプだけでは対応できないことが増え、利き手でない心も成長させ始めると言われています。
    こころの利き手は変わりませんが、その時の状況や担当する仕事などによって、どちらも使っている方はいらっしゃると思います。年齢が上がるにつれて、こころの利き手とは反対側の方も適切に使えるようになってくるのは、MBTIにおける心の成長と表現できるでしょう。

    「若い方だと利き手が一方になりやすい」「年代が高くなると両利きになりやすい」など、年代による違いはありますか。 

    それを分析・研究したものはありませんが、年代によって違いが生じるとは一概には言い切れないでしょう。 
    一般的には、まず自分の利き手を適切に使えるようになります。そのほうが、自分の見方や判断に自信が持てるようになってきますし、利き手を成熟させていく過程で、成功体験をすることが多いので、自己肯定感も上がると言われています。
    次の成長段階は、自分の利き手でない方も、意識して使っていくことから始まります。最初は何か自分っぽくないのですが、段々慣れてくると、自分の利き手でない方も、まるで利き手であるかのように感じられるほど適切に、そして臨機応変に使えてくるわけです。

    丸井グループでの取り組み

    丸井グループでも組織として、MBTIの研修を計画的に進めているチームがありますが、 現在丸井グループではどのくらいの社員が研修を受けていますか?

    丸井グループの「管理職向けのレジリエンスプログラム」を受講した200人ほどの参加者の方は、MBTIを受けています。
    そのほかにも、私を含む有資格者(認定ユーザー)が社内に2名いるため、約250人の方がMBTIを受検してフィードバックを受けています。

    丸井グループのMBTIの研修内容・研修時間はどのようになっていますか?

    丸井グループでは座学を約60分、その後の対話型の研修を約120分で実施することが多いですが、人数などにより多少変わることもあります。結構長いと思われるかもしれませんが、皆さん楽しく研修を受けていただいています。

    参加した社員の皆さんからはどんな感想がありましたか。

    以下のように前向きな感想をたくさんいただきました。

    <参加した社員の感想>
    「自己理解が深まって、なおかつ、いろんなタイプの人がいることがわかった」
    「自分が他者を見る際にフィルターがあることを認識できて、他者理解につながった」
    「同じチームのメンバーでMBTIをやると、意見が合わなかった時などに、ただ合わないと感じるよりも"タイプが違うから意見の違いがあるのかな"と思えるようになった」
    「納得感を持って、お互いに理解しようと思えるようになり、相互理解も深まった」

    多くの方が、自己理解・相互理解を深めるきっかけになったと感じているのですね。私が所属するチームでも全員がMBTI研修を受講しましたが、それぞれの考え方やそこにいたるまでの道筋が全然違ったりして、とても勉強になりました!そもそも、小口先生がMBTIに興味を持ったきっかけは何ですか?

    知り合いが受けて、おもしろいと言っていたので受検してみました。すると、人の判断にいたるプロセスの違いをありありと感じることができて、さらに興味を抱きましたね。
    MBTIの「自分の生まれ持ったタイプは自分の軸なので大切にしながら、自分のこころの利き手側ではない方も少しずつ成長させていく」という考え方がすごくおもしろいと感じて、2021年に認定ユーザーを取得しました。

    MBTIで自己理解が深まると「自分がどういうところでモチベートされやすいのか」「どういうところが判断軸なのか」もわかってきます。
    仕事でキャリアを考える際にも活用できますし、ご家族がMBTIを受けていれば、「自分とパートナーのタイプが違う」「自分と子どものタイプが違う」ということに気づくきっかけにもなるかなと思いますので、さらに活用が広がってほしいですね。

    いかがでしたでしょうか?今回は、「MBTI」をテーマに、丸井グループ産業医の小口まほこ先生にお話をうかがいました。
    MBTIは、自己理解・相互理解を深める有効なツールであることがわかりました。これは多様性を認める組織づくり、そしてWell-beingな職場環境づくりにもつながっていくのではないでしょうか。

    次回のWell-beingに働きたい!もお楽しみに! 

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