丸井グループは、2021年5月から、月替わりでヴィーガンスイーツをお届けするサービス「vee ga boo(ヴィーガブー)」をスタートしました。今回の対談では、「vee ga boo」の運営を担当する兼子が、共創パートナーである株式会社エイタブリッシュ代表取締役の川村 明子氏にヴィーガンというライフスタイルの魅力についてうかがいました。また、監修していただいた『共創経営レポート 2021*』内の企画「地球にも人にもやさしいヴィーガンスイーツづくり」のワークショップについての感想もお聞きしています。
*丸井グループがめざす姿をステークホルダーの皆さまに共感・体感していただくためのオウンドメディア
兼子:『共創経営レポート 2021』では、小さなお子さまでもつくることができる「グルテンフリーチョコチップマフィン」のつくり方を教えていただきありがとうございました。その場でつくって、食べて、参加したお子さまたちも大喜びでした。当日だけでなく、事前に材料についてご教示いただいたり、レシピを共有してくださったり、本当にお世話になりました。
川村:お子さまたちに楽しんでいただけたようで何よりです。ジャパンハートというNPO法人の活動の一つに「SmileSmile PROJECT」があります。その活動の一環で、先日の撮影と同じようなお子さま向けワークショップを定期開催していますので、私としてはいつもの活動と同じ気持ちでサポートさせていただきました。
兼子:いつも実施されているワークショップは、具体的にはどのような内容ですか。
川村:ジャパンハートは、小児外科医の吉岡 秀人先生が中心になり、ミャンマー、カンボジアなど東南アジアの国で小児がん治療などに対して無償で医療提供を行っています。私たちは日本国内で小児がんと闘う子どもたちと保護者の方にお店(パーラーエイタブリッシュ)にお越しいただき、クッキーやマフィンをつくっていただいています。お菓子づくり以外にも、線画だけのランチョンマットに色を塗ったり、でき上がったお菓子を入れる缶を自由にデザインしたりしていただいています。私はクリエイティブ・ディレクターとして、子どもたちにクリエイションの楽しさを伝えたいと考えており、このような経験を通じて、パティシエなどのクリエイターになることが子どもたちの将来の選択肢の一つに加わるとうれしいと思いながら取り組んでいます。
兼子:川村さんは、いわゆる飲食業界や料理分野のご出身ではありませんが、そもそもヴィーガンのお店を始めようと思ったきっかけは何だったのですか。
川村:私はもともと会社員をしていたのですが、27歳の時に同僚と二人で独立して、デザイン会社を立ち上げました。私自身はヴィーガンではないのですが、起業したパートナーがヴィーガンで、彼女にはヴィーガンの友人もたくさんいました。それならヴィーガンのカフェをやってみようという話になり、2000年に「カフェエイト」をオープンしました。
兼子:当時、ヴィーガンという言葉は一般に知られていたのですか。
川村:いいえ、まったく。私自身は周囲にヴィーガンの方がいたので、言葉自体は知っていましたが、自分とは無縁の世界だとも思っていました。当時は、ヴィーガンというとログハウスに住んでバンダナを巻いている人というイメージがあって...。それと、ニューヨークに留学していた時、大学にベジタリアンの教授がいらしたのですが、たまたまその方が華奢な方で、健康的にはとても見えなくて...(笑)。
兼子:なるほど(笑)。それでもカフェをオープンしたのはなぜですか。
川村:ヴィーガンは、よくよく考えると、ものすごく可能性があることに気づいたんです。例えば、友人4人で食事会をするとしますよね。そのうちの1人がヴィーガンだった場合、動物系の食材を使用するレストランでは慎重に店を選ばなくてはいけません。でも、ヴィーガンフードを提供する店なら4人全員でテーブルを囲んで同じものを口にできる。つまり、ヴィーガンは人を選ばず差別しない、誰もが平等に楽しめる食文化なんです。これは、ぜひやってみたいと思いました。そこでパートナーに、「やるからには、絶対におしゃれにやろう」と伝えました。というのも、私自身、先ほどもお話ししたように、当初はヴィーガンに対してあまりいいイメージを持っていなかったので、一般の人ならなおさらだと思いました。そのイメージを取り払うためにも、ここはデザインの力が絶対に必要だと思い、インテリアなどを吟味し、思いっきりおしゃれなカフェにしました。折しもカフェブームということもあり、当時の店舗は3階にあったんですが、1階までの階段に行列ができるほどでした。
兼子:やはり発想がクリエイターですね。
川村:当時、自分のクリエイションを発信する場所が欲しいとも思っていました。何とか自分のアイデアを形にして外部に発信していきたい。そのためのカフェでもありましたし、現在もその想いは変わりません。この店では皆がクリエイターです。例えば、パッケージのデザイン自体は私の担当ですが、包装作業の細部にいたるまで、最後にパッケージにシールを貼ったりテープを巻いたりする工程でも、美しくなくてはいけないと考えています。独創性や美的感覚、想像力が試される。そういう意味で、全員がクリエイターとしてフラットな関係性で運営しています。丸井グループさんとの関係も同じです。どちらが上とかではなく、各々がプロとして務めるべき役割をこなして、ともに協業する。このような関係性は心地良いと感じています。
兼子:私たちVEGAN事業部は、川村さんの長いキャリアと異なり、立ち上げてから2年も経っていません。2020年4月に発足した「食を通じた温室効果ガス削減イニシアティブ」という社内プロジェクトの中で、ヴィーガンというライフスタイルを広めることによって温室効果ガスの排出を削減できることに注目したメンバーがいました。それが結果的に「vee ga boo」というサービスの提供につながりました。
川村:2021年2月ごろ、こちらのカフェに兼子さんが来店してくださったんですよね。
兼子:そうです。上司と二人でうかがいました。私はそれまで、アパレル領域で企画や開発の仕事をしてきて、食分野は初めての経験でした。だからまったくの未知の世界で、まずは日本にどれだけヴィーガンのレストランやカフェがあるかということから調べました。そして100店舗、共創していただけそうなお店をリストアップしましたが、その中でダントツにスタイリッシュでおしゃれだったのがエイタブリッシュさまでした。私たちはこれから挑戦しようとしているレベルなのに、このブランドはすでに達観していると...。足元にも及ばないようなオーラがすごく出ていたんですが、そこは私たちの意地と根性で、とにかく扉をノックしてみました。そうしたら川村さんにお会いいただけることになって、とても驚きました。
川村:私もよく覚えています。
兼子:そこで、川村さんに「これまでエイタブリッシュがやってきたこととは違うビジネスを展開している丸井グループという大きな会社と取り組むことで、一緒にヴィーガンのステージを上げていきたい」とおっしゃっていただき、とても感動しました。今でも忘れられません。
川村:大きな会社でしかできないことの一つに、量産があります。ヴィーガンというライフスタイルを多くの方にアプローチして浸透させるためには、大企業が行う規模での生産と流通が必要になります。当店のお客さまの多くは雑誌の編集長やモデル、女優、ファッションディレクターといった方で、隠れ家的に利用されることが多いので、不特定多数の方への発信が難しいという側面があります。でも、ヴィーガンというライフスタイルの考え方とデザインを合わせた状態で、丸井グループさんに発信していただく。商品を通じて伝えることができれば、ヴィーガンという言葉も浸透するし、ヴィーガンの層も厚くなり、結果的に私たちも丸井グループさんにもビジネスとしての利益が出てくると思います。
兼子:私たちも、このヴィーガンの魅力をエイタブリッシュさまとの協業で広めていきたいと考えています。ヴィーガンというと、一般的には、肉を食べないことから、食べたいものを我慢するといった負のイメージがあったり、化学調味料を使わないから薄味の食事が多そうなどといわれているのですが、詳しく知ると全然そんなことはありません。一度こちらのソイミートを使ったミートソースボロネーゼをいただいたのですが、今まで食べてきたボロネーゼは何だったのかと思うくらいとてもおいしくて。一度でもこれを味わったら、むしろヴィーガンのほうがいいと感じる人も多いと思います。
川村:そうですね。あと間違ってほしくないのは、ヴィーガンとオーガニックの違いです。オーガニックというのは、いわば農薬不使用の食材のこと。動物性の食材を使わないことがヴィーガンフードの定義ですので、農薬を使ったり、添加物が入ったりしたヴィーガンフードもあるということです。ヴィーガンという言葉だけを聞いて、何も考えずに良いものだと思い込んでいる人も多いのですが、材料が粗悪なものでもヴィーガンフードはできるので、おいしくないものもあります。お菓子は、オーガニックの食材でつくると、クオリティが高くてさらにおいしくなります。だから、私は素材にこだわりオーガニックの食材を使ったヴィーガンフードの提供をめざしています。
兼子:オーガニックでヴィーガン、その両立は相当難易度が高そうですね。
川村:確かにその通りです。どんなに頑張っても、オーガニックの食材が3割とか4割ぐらいの時もあります。そこで、最近は富山県で自社農園を始めました。オーガニック認証は取っていないですが、できるだけ農薬を使わず栽培された野菜やハーブを使用し、85%ぐらいをオーガニックの食材などにしたいと考えています。
兼子:最後に、エイタブリッシュさまのコンセプト「UNIVERSAL PLEASURE FOR EVERYONE」について教えてください。
川村:さまざまな垣根を越えて、ユニバーサルに豊かさを提供したいということです。デザインも材料も味も空間も、すべてが豊かさを感じられることをめざしています。日本ではまだマイノリティのヴィーガンですが、実はこれが究極に豊かなことだということを知ってほしい。そして、ヴィーガンという選択肢が増えることが、さらにあなたを豊かにするという方向にステップを踏みたい。本当に差別なく、誰でも豊かさを感じられるものであることがヴィーガンの本質だと思っています。
兼子:「vee ga boo」では商品だけでなく、川村さんのような生産者の方々にスポットライトを当てることを一つの軸とし、商品を出品してくださっている全ブランドさまへのインタビュー記事を「vee ga boo」のサイトやInstagramを通じて発信しています。まだサービスが始まったばかりで、自分たちがすべきことが何なのか、すごく悩んでいたりするんですが、川村さんにアドバイスをいただき、いろいろと模索しながらより良い共創にしたいと考えています。
株式会社エイタブリッシュ 代表取締役1968年生まれ。クリエイティブ・ディレクターとして数多くの企業広告やアートワークを手がける。2000年にヴィーガンカフェ「カフェエイト」をオープン。2014年、デザイン会社の株式会社Apllo & Char Company(アポロアンドチャーカンパニー)を設立。2015年、「レストランエイタブリッシュ」を移転オープンし、2020年、「パーラーエイタブリッシュ」にリニューアル。同年、社会貢献をスローガンに掲げるドッツウィル株式会社を設立。
8ablish ホームページ - https://www.8ablish.com/
PARLOR 8ablish 公式 Instagram - https://www.instagram.com/parlor_8ablish/
株式会社okos VEGAN事業部 チーフリーダー
2010年、株式会社丸井グループ入社。
さまざまなヴィーガンスイーツを堪能できる「vee ga boo」
vee ga boo 公式サイト - https://vee-ga-boo.jp/
vee ga boo 公式Instagram - https://www.instagram.com/vee_ga_boo_official/
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